安積 健 氏
辻・本郷税理士法人 審理室 部長 / 税理士
今、スキャナ保存制度への関心が高まるとともに、導入を検討する企業も増加しつつあります。企業経営の観点で、今確認しておくべき税制トピックを解説する本講演では、そのシステム要件や社内体制、業務フローと整備する書類について、詳細に解説しました。ほかにも、平成31年10月に迫った消費増税について、軽減税率の再確認と新たに改正されたポイントの検証を行いました。
スキャナ保存制度とは、国税関係書類(決算関係書類以外)をスキャナで読み取った電子データで保存できる制度です。平成17年4月に制定されましたが、使い勝手が悪かったことから、利用企業が限られていました。しかし、平成27年度および28年度の大幅な改正で、要件が緩和されました。「これにより、導入企業が一気に伸びています」と、安積氏は振り返ります。
ここから安積氏は、緩和されたスキャナ保存制度にある、機器やシステム、社内制度(内部統制)など、いつくかの要件について、順次解説していきました。
入力方法には「早期入力方式」と「業務処理サイクル方式」とがあります。早期入力方式は、作成・受領後、7日以内に入力。業務処理サイクル方式は、その業務の処理に係る通常の期間(最長1カ月)を経過した後、7日(計37日)以内に入力します。
解像度は、25.4mm当たり200ドット以上、階調は256階調以上が必要です。
非改ざんと入力時期の証明のため、タイムスタンプの付与が求められます。
解像度、階調、書類の大きさに関連する情報の保存が求められます。ただしA4以下の場合は、大きさの情報は例外とされています。
訂正または削除を行った場合は、これらの記録を確認できなければなりません。
入力を行う者、またはその者を直接監督する者に関する情報を、確認できなければなりません。
事務処理(書類の作成または受領、スキャナ入力、入力データ確認、タイムスタンプ付与)の体制を文書化して実行しなければなりません。
安積氏によると、27年度改正で緩和された分、内部統制が求められているという背景があるようです。事務処理は分業が原則となっていますが、従業員20人以下(商業またはサービス業は5人以下)の場合は例外となっています。
すべての国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と、国税関係帳簿の記録事項との関連性を確認できることが求められます。
画面および書面へと、速やかに出力可能であることが求められます。
システムの操作マニュアルや、事務手続きを明らかにした書類の用意が必要です。
記録事項を検索できる機能を確保しなければなりません。
この後、安積氏はスキャナ保存制度の業務フローを示し、その具体例を解説しました。「書類の受領者以外の者が、入力から保存まで行う場合」の業務フローは次のようになります(A、B、B'、Cは担当者)。業務処理サイクル方式、入力期限37日以内のフローです。
また、「書類の受領者が入力から保存まで行う場合」の業務フローは次のようになります。これは小規模企業者の例で、Cは税理士、特に速やかに(3日以内)入力が必要です。
さらに安積氏は、「適正事務処理規程」「事務分掌規則」「事務処理不備報告書」「スキャナによる電子化保存規程」について、実例を示しながら関係書類の整備と運用の徹底を訴えました。
引き続き講演は、消費増税の話題へと移ります。「消費税率10%への増税は2回の延期を経て、平成31年10月1日に実施予定となっています。今度は実施されるでしょう」と安積氏は予想します。
これに伴い、気になるのが8%に据え置かれる軽減税率です。その対象が食料品(酒類、外食、ケータリング等を除く)と新聞(週2回以上発行され定期購読契約に基づくもの)です。安積氏は、仕入税額控除方式の要件を示すとともに、税額計算の計算方法と税率引き上げ後の経過措置について、具体的に解説しました。
また、平成30年度に改正となった点についても解説しました。例えば、適格請求書等保存方式の実施に伴って、適格請求書等の保存を要せず、帳簿の保存のみで仕入税額控除ができる場合(課税仕入れの支払対価の合計額が3万円未満である場合に帳簿の保存のみで仕入税額控除を認める措置は廃止)などです。日々の業務に欠かせない内容が多く、来場されたお客様はメモを取りながら熱心に聴講していました。
フリーダイヤル0120-023-019(受付時間:平日9:00〜17:30)
情報システムセミナーなどのご質問・ご相談はお気軽にお問い合わせください。
メールにて情報を案内させていただきます。