企業にとって不可避となっているハラスメント対策。近年、セクハラ・パワハラ・マタハラに関する裁判で最高裁判例が出され、大きなニュースとして報道されています。本セミナーでは、リアルな事例とともに、具体的な対策が紹介されました。また、平成27年12月施行のストレスチェックについても解説がありました。
佐藤 修 氏
佐藤社会保険労務士事務所 代表 / 社会保険労務士
佐藤氏は1つの判例を取り上げます。それは、総合電機メーカーT社の女性従業員がうつ病になって休職、その休職期間満了後に解雇された事件です。解雇の是非、損害賠償の金額、労災の3つが争われました。
一審では、会社は従業員の変化に気づき必要な措置を講じる期間があり、安全配慮義務違反であるとして、すべてを会社の責任としました。これを会社側が不服として、上告。二審では女性従業員が神経科への通院を会社に申告しなかったことを斟酌し、2割の過失相殺と減額を認めました。これを女性従業員が不服とし、最高裁に持ち込まれました。結果、過重な業務が続く中で、体調悪化が見て取れる場合、本人の申告がなくても、労働者の心身の健康に配慮が必要として、高裁へ差し戻しされたのです。
「ポイントは、最高裁がメンタルヘルスに関する情報はプライバシーに属する情報であり、女性従業員に申告の義務はなかった、としたことです。最高裁の判決は法律と同じレベルの重さがあります。もはや企業は、従来以上にうつ病患者を解雇することが難しくなりました」と、佐藤氏は指摘します。
双方和解は見られず、争いはまだ続いています。民事請求額の算定方法は、原告側が複数請求して、いずれかが認められるパターンが一般的です。女性従業員は未払賃金請求と休業損害の損害賠償請求を求めています。未払賃金とは過去の未払賃金、休業損害とは将来定年までにもらえるはずだった賃金です。「当初は2800万程度の支払いとなっていましたが、現時点は1億以上になっていると考えられます。T社は負ける可能性が高かった裁判に持ち込むべきではなかったかもしれません」と佐藤氏は解説します。
対策として佐藤氏は、「(1)過重労働の根絶」、「(2)健康診断の受診徹底」、「(3)損害保険の加入検討」を推奨しました。
H市の病院に勤務していた女性従業員が第2子妊娠の際、産休と育休を取得する前に軽い業務への転換を求めたところ、病院側は軽い業務へ転換する代わりに管理職であった副主任職を外し職場復帰後も役職を元に戻さず争ってしまった事件です。
女性従業員は、男女雇用機会均等法の違反であるとして、病院側に約170万円の損害賠償を求めました。一審二審とも、女性従業員の降格は本人からの希望であるとして、病院側を支持しましたが、最高裁ではこれが翻され、人事権濫用であるとして差し戻しされています。
これにより、妊娠にともなう降格は原則として認められなくなりました。ただし、「合理的な理由が客観的に存在する」、あるいは「業務上の必要性から支障がある」場合は例外とされます。「降格する場合は、従業員との話し合いを記録として残すなど、慎重な対応が必要です」と、佐藤氏はアドバイスしました。
つづきは…
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