情報システムセミナーレポート[2020年 新春] 会計管理 会計を経営に活かすシリーズ〜収益性分析ROE編

2020年2月6日(木) 東京会場

C11
9:40〜11:00
「会計を経営に活かす財務分析」シリーズ第2弾
財務指標よって経営を分析し改善につなげる —収益性編Part2—

金子 智朗 氏
ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表社員 / 公認会計士 / 税理士

企業ではさまざまな財務指標を経営管理に使用していますが、必ずしも有効に活用されているとは限りません。なぜならば、計算式の「意味」を考えずに、機械的に数値を当てはめて計算しているケースが多いからです。「意味」を理解していないと、それこそ全く意味のない計算をしているだけになります。当セミナーでは財務指標を意味から理解し、本当に使いこなすための方法をお伝えします。「会計を経営に活かす財務分析シリーズ第2弾の今回は、収益性編のPart2としてROEに焦点を当て理論と実例の両面から解説しました。

収益性分析の2つの指標、ROAは収益性の総合指標、ROEは株主から見た収益性

財務分析には主に5つの切り口があります。どれだけ儲けているかという利益の程度を示す収益性、どれだけ支払い能力があるかというキャッシュの程度を示す安全性、どれだけ人・モノ・金の経営資源を活用しているかの生産性、どれだけ伸びているかの成長性、どれだけ株主に経済的な還元をしているかの株主関連指標です。

収益性を見る代表的な指標としては、ROA(総資本事業利益率)とROE(自己資本利益率)があります。前回の第1弾ではROAを解説しましたが、今回はROEに焦点を当て解説します。
ROEは当期純利益を自己資本で割って算出し、株主投下資本がどれだけ利益を生んでいるか、を示します。ここで注意を要するのは当期純利益と自己資本にそれぞれ何を使うかです。それは、特に連結財務諸表を分析するときに問題になります。

2つの収益性の指標

分析は連結ベースが基本、ROEは対象株主がポイント

まず、基本的な話として、特段の事情がない限り、財務分析は連結ベースで行うのが基本です。その際に注意が必要なのが非支配株主(日本基準では2015年3月以前は「少数株主」と言っていたもの)の存在です。

連結財務諸表における非支配株主の位置付けには2つの考え方があります。

1つは、親会社と子会社を一体とみなす「経済的単一体説」という考え方です。この考え方では、非支配株主は連結財務諸表における株主となります。IFRS(国際会計基準)はこの立場を取っています。

もう1つの考え方は、連結財務諸表はあくまでも親会社の株主に報告するためのものとする「親会社説」という考え方です。この考え方では、連結財務諸表における株主は親会社の株主だけになりますので、非支配株主は株主になりません。日本基準はこの立場を取っています。

この親会社説が具体的に表れているのが、連結当期純利益の計算です。非支配株主を少数株主と言っていた2015年3月期以前の日本基準では、連結当期純利益を計算する際に少数株主への帰属額を控除することによって連結当期純利益を親会社株主に対する帰属額にしていました。

ところが、2015年3月期以前から、少数株主持分は純資産の内訳に含められていました。

したがって、連結財務諸表において単純に当期純利益を純資産で割っても、一体どの株主にとって収益性を計算しているのか、全く意味不明の計算結果になってしまうのです。

大事なことは、親会社の株主向けなのか、全株主向けなのか、ROEの計算目的に応じて式を使い分けることです。

なお、日本基準は2015年4月以降、「少数株主」を「非支配株主」と名称変更したのと同時に、連結当期純利益を全株主に対する帰属額に変更しました。これによって、何も考えずに当期純利益を純資産で割っても、少なくとも意味のない計算になることはなくなりました。ただし、それが「全株主から見たROE」という意味になっているということは認識しておく必要があります。

また、2015年4月を境に連結当期純利益の意味が変わっていますから、ROEを含め、当期純利益を使っている指標の連続性が保たれていないことにも注意が必要です。

そのROEに意味はあるか?

ROEを高めるには

ではROEを高めるにはどうしたらいいのでしょうか。式を分解し原因分析を行い改善につなげるのが分析の常とう手段ですが、ROEの場合は総資産を使って式を分解します。そうすると、ROEはROAと財務レバレッジという2つの指標に分解できます。

ROEを高めるには

ROEを高めるには、まずは当然ながら総合的な収益性であるROAを高めること。そしてもう一つは財務レバレッジを高めることです。

財務レバレッジは、負債の比率を高めれば高まります。ただし、前提があります。それは総資産事業利益率が借入利率よりも高いことです。

財務レバレッジを高める具体的な手段に、自社株買いがあります。自社株買いは、株式を取得してもらった株主も、残された株主にもメリットがありますから、ROEが上昇することと整合的になっています。

ただし、自社株買いにはリスクもあります。自社株買いは、調達した資金の払い戻しですから、向かう先は貸借対照表の縮小均衡です。それは、自ら身を削っているようなものですから、長期的には富を生み出す力がなくなり、株主にとっても望ましくないことになる可能性もあります。

今回はROEについて解説しましたが、全ての指標を使う上で重要なことは計算式の意味を正しく理解し、分母と分子の整合性をとることです。なんとなく計算式を当てはめてしまうと、意味のない計算をしてしまったり、あるいは誤解により経営判断を誤まらせてしまう可能性もありますので注意が必要です。

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