情報システムセミナーレポート[2020年 新春] 人事管理 働き方改革は「働きがいあふれる」組織づくりから

2020年2月5日(水) 東京会場

B51
15:20〜16:30
働き方改革時代に求められる『働きがいあふれる』組織のつくり方

前川 孝雄 氏
株式会社FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師

政府は賃上げや労働時間の短縮などを中心に、さまざまな制度を導入し「働きやすさ」の充実を企業に求めています。しかし、働く人たちの真の満足度が上がっているようには思われません。働く人たちの仕事の満足度が高まらない最大の理由は「働きがい」を得られていないことにあるのではないでしょうか。当セミナーでは「働きがい」に焦点を当て、働き方改革の現状・実態の問題点を紐解きながら、「働きがいあふれる」チームをつくるヒントを投げかけていきます。

女性の職場定着、高齢者は雇用延長

働き方改革が求められる世の中の変化にはまず人材不足があります。日本の失業率は2%台で世界に類を見ない完全雇用状態です。労働市場の歴史をみると、昭和60(1985)年の男女雇用機会均等法の制定から職場における男女平等の施策が進む一方、日本経済は「24時間戦えますか」の過熱状態になり、1989年5月から始まった日銀の公定歩合引き上げでバブル経済が崩壊、就職氷河期に入りながらも女性の職場への定着は進みました。女性、若手、高齢者そして外国人の雇用が人材不足解消の鍵を握ります。

制約ある人材にも頼らざるを得ない超人材不足時代

内閣府の男女共同参画白書によると、1980年に共働き世帯は614万で夫が働き妻が家事・育児を担う専業主婦世帯の1114万の半分程度でしたが、90年代にほぼ同数の約900万世帯となり、2018年には共働き1219万世帯、専業主婦世帯は606万世帯と完全に逆転しました。男性のみが「24時間戦えますか」という時代はとうの昔に終わり、男女とも仕事も家事・育児も担う共働きが当たり前の時代になったのです。高齢者も66歳以上まで働ける企業が全産業で3割を占め、規模別で人材不足が深刻な中小企業(31.4%)が大企業(25.3%)を6ポイントも上回っています。

働きがいの確保と労働生産性の向上、2つの課題に取り組む

働き方改革には大きく2つの柱があります。1つは残業時間の上限規制、勤務間インターバルなどを通じて、働き過ぎを防ぎながら、ワーク・ライフ・バランスと多様で柔軟な働き方を実現する労働時間法制の見直しです。もう1つは正社員とパート・有期雇用・派遣などとの不合理な待遇の差をなくす同一労働同一賃金の実現です。

特にワーク・ライフ・バランスは重要で、多くの女性は結婚、出産、育児をして働き続けることができるか不安を抱えています。一方、働きやすさが行き過ぎると、責任ある仕事を任せてもらえなくなり、キャリアを身につけたいと考えている人は自分自身が成長する機会を失うリスクがあります。経営の側からみると、日本の1人あたりGDPはOECD加盟36か国中、18位と真ん中で、労働生産性となるとさらに低い21位にとどまっています。労働者が安心して働き続けられキャリアを伸ばせる働きがいと労働生産性の向上、この2つの課題を実現するために、何をどうすればいいのでしょうか。

画一性を強制する組織から、多様性を認め活かしあう組織へ

1つは働く人がモチベーションを持って取り組むキャリア形成を支持する組織に変えることです。企業から個人へのパワーシフトが起きている現状を踏まえ、終身雇用、年功序列で画一性を強制するピラミッド型の職場から、多様性を認め互いの能力を活かしあうサークル型の職場へ環境を変えていかなければ、企業は生き残れません。意欲的に働く動機づけは「ポスト」と「報酬」から「組織の目的」と「個々の尊重」に切り替えます。

雇用の現状を日米で比較すると、日本は新卒採用で未成熟な人材であっても採用し、階層別に分けて長期視野で育成していくメンバーシップ型雇用と言え、職能給は成果と一致せず、給与は後払い。これに対し、米国は仕事の内容に応じて一人ひとりと契約を結ぶ即戦力のジョブ型雇用で、リーダーのみ育成し、職務給は成果と一致し、給与は即時払いです。このためトップや高スキルを持つ人材のみ破格の報酬をもらい、労働市場には慢性的に若年失業者があふれる状態となります。

これからの日本企業は、若手から一人前まで育てる日本型雇用の強みを残し、一人前のミドル以降は欧米型のジョブ型雇用を取れ入れるハイブリッド型雇用を目指すべきです。人材育成は階層別に加えて一人ひとりの意思を尊重するキャリア自律支援を増やし、ミドル以降は成果と一致する職務給や成果給を支給する。米国型の「即戦力採用、リーダーのみ育成」は日本にはなじみません。個人のキャリアビジョンを尊重して人を育てる環境をつくり、それをインセンティブとして優秀な人材獲得に結び付けるのです。

働きやすさと働きがいはバランスが重要

働きがいは働きやすさと違います。働きやすさばかりを追求したら従業員は権利意識だけ高まり、何より大切な人材が育たず会社経営もダメになります。労働時間の削減、同一労働同一賃金による賃上げ、在宅勤務のサテライトオフィス、育児休暇や介護休業の取得促進などの施策で働く人の不満足を減らす「働きやすさ」はあくまで衛生要因です。これらは多様な従業員が働く環境整備ととらえ、仕事の内容、責任、承認、達成などで満足を増やす「働きがい」こそ最も重要な目的と捉えて創出していくべきです。

「働きやすさ」の整備から「働きがい」の創出へ

デジタル大辞泉で「働き甲斐」は「働くことによって得られる結果や喜び。 働くだけの価値」とありますが、「働く → 傍(はた)を楽にする → 人のために動く → 人のために動く喜びを感じられること」でもあるのです。これまで働く人の動機づけに活用されてきたのは給与や肩書きでした。誰もが「今、我慢して働けば将来は豊かになる」と信じてもいました。しかし今は働きがいこそが動機づけの源泉です。今、働く人は「今の幸せの積み重ねが将来の豊かさにつながる」と考えます。上から目標を設定し業務遂行を管理する外発的な動機づけでは「やらされ感」が蔓延するだけです。これに対し、対話によって目的に納得してもらい本人の意思を尊重した役割付与をする内発的な動機付けで、やる気を醸成するのです。

5つのステップで組織に「働きがい」を育む

組織に「働きがい」を育むには5つのステップが必要です。1つはタテ・ヨコ・ナナメの 「相互理解」を促進することです。多様な人たちが働くようになってきた職場では「あ、うん」は通じません。仕事に対する考え方がかみ合わなかったり解釈が違ったりします。コミュニケーションのズレが起こりやすく、悪気の無い言葉のあやで関係が悪化することもあります。これを未然に防ぐためにも、業務時間内に互いの共通項を見つけあうために、あえて自己開示する雑談の時間を設け、安心できる仲間と働いているという「相互理解」を進めるのです。

2つ目は組織と個々の役割の目的に共感しやる気をもってもらう「動機形成」です。経営者や管理者など組織を束ねるリーダーは、まず組織のみんながワクワクする将来のありたい姿をビジョンとして掲げなければいけません。さらに、そのビジョンを実現するために、一人ひとりがどんな持ち味を活かして成長・活躍してほしいかにも納得してもらうのです。ソロバン(目的、成果)の前に、仕事へのロマン、共感、感動を得るコミュニケーションが必要です。ソロバンは詳しく言うと、戦略・戦術・ビジネスモデル・マネジメント(管理、評価)の外発的な動機付けに通ずるもので、ロマンは情熱、共感を呼ぶリーダーシップなど内発的な動機付けに通ずるものです。

多様な人たちの働きがいを育むためには、善い目的に向かうチームの一員であることが誇りに感じられる「社会(帰属)欲求」と、自分が持つ能力や仕事の成果をきちんと評価してもらいたいという「承認欲求」を満たすことが欠かせません。

3つ目は互いの強みを活かしあう「協働意識」の醸成です。組織には交渉力のある人、流行に敏感で先進的な発想ができる人、献身的でホスピタリティのある人など、様々な強みや持ち味を持つ人がいるはずです。こうした一人ひとりの力をつなぎ合わせて、組織のビジョン(あるべき姿)と業績成果を実現していくのです。

組織に「働きがい」を育む5ステップ STEP3

4つ目は成長と改善に向けた「切磋琢磨」です。現場で人を育てるには、仕事を「任せる」、やりきるまで「応援する」、成果を振り返る「内省させる」という3つの段階があります。一人ひとりの部下に絶えず良い期待をかけ続け、互いに切磋琢磨し成長していくことが喜びになるよう支援していくのです。

5つ目の最後は、評価が良くても悪くても受け入れてもらう「評価納得」の獲得です。業績は良い時も悪い時もありますが、一時期を切り取った断面図にすぎません。しかし常に中長期視野で一人ひとりの働きがいと成長・活躍のプロセスととらえ、寄り添い支援していければ評価の良し悪しに関わらず納得が得られるはずです。

「働きがいのある職場づくりのため、明日から早速始めましょう」と前川氏は講演を締めくくった。

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