谷島 宣之 氏
日経BP社 日経BP総研 上席研究員
できの悪い基幹系システムを放置し、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やIoT(インターネット・オブ・シングス)に取り組んでも、思うような価値は創れません。本講演では社長の期待に応えられる基幹系システムの姿と、その整備方法を提言しました。
「社長は基幹系システムにどのような期待を持っているでしょうか」と谷島氏は会場に問いかけます。
「多くの社長のやりたいことは、売り上げを伸ばす、利益が出る、株価を上げる、社員を元気にすること、です。しかし、現状の情報システムについて社長は、遅い、高い、まずい、と不満を持っています」(谷島氏)。
次に、RPA、AI、IoTなど新しいテクノロジーへの期待はどうでしょうか。ちなみに、日経BP総研の「世界を動かす100の技術」というアンケートでは、2019年時点で期待するものとして、1位にAI機械学習/深層学習、2位にAI音声学習、4位にIoTがランキングしています。
AIはパターン認識の能力があり、チャットボットとしても価値があります。IoTは人間が入力することなく対象物の把握が可能となります。RPAはパソコン業務を自動化します。
「しかし、会社の方にRPA、AI、IoTのことをうかがっても、コンセプトのことを話しているのかアーキテクチャのことを話しているのか、判然としないケースが多くあります」と谷島氏は指摘します。
「利用にあたって課題もあります。日本経済新聞と日経コンピュータが実施した『AI活用のリアル113社実態調査』において、多くの企業が今後改善すべき課題として『AIを使う人材の増強(87.6%)』、『AI学習に必要なデータの収集・加工(76.1%)』などが指摘されています。
さらにテクノロジーには副作用があります。RPAは適用範囲が限られており、分断固定化とデータ不整合を招きかねません」(谷島氏)。
すばらしい情報テクノロジーも、何のために使うのか、どの事業や業務に使うのか、データをどう扱うのかの検討が必要になります。これは全社的な問題です。情報システム部門のスタッフに、事業部門や経営者と同じ土俵で話し合える人材が育っているでしょうか。「このような人材なしには新しい情報テクノロジーを導入しても、副作用ばかりが現れます」と谷島氏は強調します。
新しい情報テクノロジーを活用して価値を生むためには、前提としてしっかりとした基幹系システムの存在が不可欠です。 なぜなら、価値を生むデータは基幹系システムがとりまとめているからです。情報テクノロジーがどのように進化し、形を変えようとも、 基幹系システムは事業全体を支えるデータ基盤でなければいけません。
基幹系システムは事業の事実を把握できるものであり、蓄積した業務知識を利用できるものでなければなりません。しかし、業務別・部門別にシステムが縦割りになっており、現場と本社(情報システム部門)が独立してデータを管理しています。
このため、基幹系システムの周辺には、次のような残念な現状があります。
ここで谷島氏は「業務の地図」の作成を提案します。事業や業務で使う言葉とその関連が分かる「絵」です。作成上の注意点は以下の通りです。
「業務の地図」を作成するための手法は色々あります。ビジネスモデル、データモデルといった用語で調べていただくと見つけられると思います。
「業務の地図」作成が、しっかりした基幹系システムの整備を可能にします。地図作成は業務部門、データの整備はシステム部門の役割となります。「遠回りになるかもしれませんが、この業務地図の作成をおすすめします」と谷島氏は会場に呼びかけます。
情報システムの仕事は、何をするのか考える、全体の調整、関係者を引っ張るなど、開発と運用の原則維持は変わることはありません。「最新テクノロジーを活かせるかどうかは、基幹系システムにかかっています。段階的に、まず事業と業務の俯瞰から着手してください」と訴え、谷島氏は講演を締めくくりました。
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