人事・給与情報ソリューションでのグループ共通基盤活用事例!
大規模グループでの共通基盤構築事例

講師HRシステム構築アドバイザー(MHIパーソネル株式会社元代表取締役) 野村聡氏

三菱重工グループへの「OBIC7人事給与システム」導入。本体の三菱重工が導入しているSAP(ERP)と連携しながら、本社と子会社間で「部分最適」と「全体最適」を実現しています。導入プロジェクトの推進主体であるHRシステム構築アドバイザー野村氏(MHIパーソネル株式会社元代表取締役)にシステム共通基盤を構築するポイントや活用メリットなどについてご講演いただきました。

共通基盤構築の狙い

MHIパーソネルは、2003年4月に三菱重工業株式会社の人事部門を分離して設立された会社です。主な業務として、親会社には人事システムの提供、国内グループ会社には人事給与システムや就業システムの導入、給与計算・旅費精算業務受託、福利厚生制度共通プラットホーム構築などを行っています。

MHIパーソネルの設立された2003年まで、三菱重工の人事システムは15カ所の事業所ごと個々に構築されていました。「従業員番号も各事業所で異なり、それぞれが独立した会社のようでした」と野村氏は振り返ります。システムを分散化していたため、人事情報の提供に時間と手間がかかり、人材の重複配置や業務の不統一などの問題が生じていました。そこで本体の三菱重工が導入したのがSAP人事システムです。これが分散化から「部分最適」「全体最適」への第一歩となりました。

次に三菱重工が注目したのがグループ各社の人事システムでした。グループ各社が個々にシステム構築しており、(1)各社独自仕様が多くシステム運営・維持費用が多額になってしまう、(2)グループ全体よりも個社優先、(3)業務標準化が図れない、(4)制度統一・システム統一に手間がかかる、(5)スケールメリットが出てこない、といった課題がありました。そこで打ち出されたのがグループ全体で活用できる共通基盤の構築です。「システム運用費用削減、業務の標準化、共通的制度の確立、経営資源(人・物・金・情報)の効果的活用を目指しました」と、野村氏は改革の狙いを語ります。

OBIC7人事給与システム選定のポイント

「比較対象とするシステムは、当初は『給与奉行』だけでしたが、比較項目が増えるに従って、SAPも含めきちんと比較することにしました」と野村氏は経緯を語ります。構築面からの比較ポイントは、コスト(イニシャル、ランニング)、構築期間、インフラの構築しやすさ、親会社とのシステム連携、人員規模にマッチするパッケージ内容、パートナー会社としての信頼性(サポート体制)など。業務面では、画面の見やすさ、改修のしやすさ、操作性、習熟しやすさなどを比較検討しました。

これらの項目により、最終的にグループ会社の人事給与システムとして採用されたのがOBIC7(クラウド型)でした。比較各項目をクリアしていたことに加えて、大企業から中堅・中小企業まで豊富な導入実績があること、シェアードサービス会社での利用実績もあること、クラウド型でのシステム運用にも柔軟に対応できることなどが評価されました。グループ各社の異なる人事制度や給与規則への対応が比較的容易に行えることも採用の理由になっています。また、導入支援の窓口はMHIパーソネル、実際の構築はオービックと、両社で協働する基本方針が決定されました。

短期間・低コストで構築

構築にあたっては、システムと業務の担当が有機的に連携する体制を確立。プロジェクトマネジャーが全体を見渡して管理ができることを重要視しました。MHIパーソネルとオービックで定例ミーティングを開催して、きめ細かく情報を共有。導入に際しては、オービックにすべて任せることもありましたし、MHIパーソネルとオービックが、グループ会社のニーズに合わせて分担することもありました。

「初期の業務分析、フィット&ギャップを確実に重ねながら、本稼働までわずか7カ月ほどの短期間でサービスイン。一社あたりの費用は災害対策を含めたインフラコストを考慮すると5千万程かかるところ、クラウド型を採用することで大幅に抑えることに成功しました」と、野村氏は成果を強調します。

新たな基盤は人事給与情報をOBIC7で管理し、三菱重工本社のSAPと連携。グループ各社間をLAN接続し、データセンターにDBサーバー、Webサーバー、APPサーバーを配置。さらにバックアップサーバーを設けて災害対策としています。OBIC7が導入されているグループ会社は現在50社程度。今後も共通基盤の提供を続けていきます。

グループ内人事・給与システムのクラウド展開

新システムにより、システム開発費・改修費の削減、1回の改修で50社分すべての改修に対応、サーバー導入や維持運用費用の削減、規則・税制の改正などによるシステム改修の負荷軽減、人事と給与の情報一元化、CSVファイル作成などによる業務効率化、人事給与担当者の負荷軽減など、多くのメリットを実現しています。そして、「現状、まだ業務標準化ができていないところが残っており、統一できていないシステムもあります。これからも全体最適に向けて、さらに業務の統一を進めていきます」と、野村氏は今後の展開を語りました。



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