“買い手市場”時代のリスクを回避し、収益性を高めるために、開発物件ごとの「個別収支管理」を徹底。
不動産、建設の分野でIT(情報技術)の活用が進んでいる。インターネットが分譲マンションの販売促進の媒体として定着しつつあり、ゼネコンでも効率的な現場運営の有力な武器としてITを導入する企業が増えている。一方、マンション・戸建住宅デベロッパーでは、大型物件完成ラッシュの反動による売れないストック物件の増加、地価の下げ止まりによる用地取得難、金利下げ止まりによる収益性の低下や購買意欲の減速が予測されている。これに対処し“勝ち組”となるためには、プロジェクトごとの収支管理を徹底し、不採算物件を発生させないことが大原則といえる。先進企業のシステム導入成功事例を紹介しよう。
マンションも戸建住宅も、安いだけでは売れない、住むだけでなく投資対象としても魅力ある物件だけが売れるという、二極化時代を迎えた。商品開発にも戦略転換が迫られているが、経営管理手法にも発想の転換が求められている。
それは、マーケットリスクを考慮した“勝ち組”の経営戦略への転換である。買手市場の状況では、不採算プロジェクトを発生させないことが大原則であり、そのためには個々の開発プロジェクトごとの収支管理を徹底してチェックする必要がある。A社では、「プロジェクトごとの収支管理」と「プロジェクトごとの会計」とを統合させることで、採算性を早期チェックできるシステムを導入したいと考えた。しかし、現場の業務システムと基幹システムをローコストで統合できる住宅デベロッパー向けERPは見当たらなかった。その難題を一挙に解決したのが、オービックの業種別テンプレートとOBIC7の会計パッケージを組み合わせ、最適な統合システムを構築する“コンポーネントERP”という手法だった。
「プロジェクト会計システム」構築を成功させる秘訣、それは、まずしっかりとした会計システムを確立することだといわれる。会計業務は、経営の根幹となる経理部門の基本業務を的確にカバーする必要があり、できるだけローコストで構築できることが望ましいのはいうまでもない。
一方、現場系の業務システムは、企業ごとの特性に応じて構築する必要がある。かといって、手作りしていたのではコストが膨らむばかりだ。そこでオービックの業種別テンプレートをベースに自社に合わせてカスタマイズする方法が威力を発揮する。
A社では、まずベースとなる会計システムをOBIC7で固め、業種別テンプレートで自社の特色に合わせた業務システムを作り、両者の連携を実現した。こうすることで、プロジェクトごとの正確な収支管理だけではなく、会計実績をタイムリーに事業計画にフィードバックすることが可能になった。
住宅デベロッパー向け「プロジェクト会計システム」には、プロジェクト会計機能以外に、月次決算・四半期決算に標準対応できること、不動産および建設業の会計基準への対応が求められる。
しかし、これだけでは不充分だ。個々のプロジェクトを原価明細レベルで分析・チェックするためには、多年度明細累積型データベースが必要であり、企業の文化・特性に応じたアドオン・カスタマイズに対応できることも重要である。さらに、グループ企業間での取引を管理・支援する機能も不可欠といえる。オービックのプロジェクト会計システムはこれらの要件に基本的な部分で適応しているため、住宅デベロッパーのさまざまなニーズに対応が可能となる。