情報システムセミナーレポート[2019年 夏] ITトレンド AI・ロボットで建設業の生産性向上・働き方改革を実現

2019年6月12日(水) 東京会場

B12
9:30〜11:00
— 生産性向上・働き方改革に向けて —
建設業界のICT化 AI・ロボット活用の最新動向

家入 龍太 氏
建設ITジャーナリスト / 株式会社イエイリ・ラボ

労働人口減少による人手不足対策が急務となる中、昨今AIやロボットを活用した生産性の向上や働き方改革が成果を上げています。建設業界は必ず発注者の理解や協力が必要で、ノウハウの継承が難しいなど様々な障壁がありますが、今後、最新のICTの導入が進み、問題を解決し障壁を乗り換えていくと期待されています。当セミナーでは建設業界における最新動向・事例の紹介を通し、建設業界に従事する人達がどのようにAIやロボットを活用するべきか、また、そのために必要なスキルは何かを解説しました。

驚異的な工期短縮にITが活躍

家入氏は最初に1964年の東京五輪の開催に向けた建設工事の例を取り上げました。都心から駒沢競技場まで国道246号線を拡幅する工事のビデオを見せながら、1959年の開催決定からわずか5年で競技場やホテルをつくり新幹線の開業にこぎつけた建設業界の偉業を紹介しました。驚異的な工期短縮の例は、スペイン・バルセロナのサグラダ・ファミリア(聖家族教会)です。同国の天才建築家、アントニ・ガウディの設計による巨大な教会は1882年に着工され、つい30年ほど前までは「完成までに、あと300年はかかる」といわれていました。それが今は7年後の「2026年には完成する」に変わってきたのです。裏にはITの活用がありました。

教会構造の応力実験では3次元の応力解析に代わる「逆さ吊り実験」で柱などの重量による圧縮の力だけで堅固な構造物を建築できるシミュレーションを駆使し、3Dプリンターで模型を製作。設計、施工の大幅なスピードアップを実現しました。ガウディのデザインは柱などの装飾で複雑な丸みを帯びたものが多いですが、3Dソフトを使えば正確に再現できます。さらにサグラダ・ファミリアの建設現場では3Dソフトによる切断ミュレーションから得たデータで、実際にCNC(数値制御)加工機で石材を切削し、荒削りが完了した後、さらに研磨して仕上げていく手法を採用しました。教会南面の鉄筋コンクリートやその南面の中の小構造物、昔ながらのレンガアーチ、螺旋階段の移動型枠などすべてに最新のITを駆使した3D技術が使われています。

IT活用で建設業界の労働生産性が大幅向上

国土交通省はICTの全面的な活用(ICT土工)などの施策を建設現場に導入することで、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を進めています。家入氏は事例を交えながら政策について詳しく説明しました。日本の産業の付加価値労働生産性は1990年代後半から製造業をはじめ全産業で上昇しています。これに対し、建設業は単品受注生産などの特殊性や工事単価の下落などで低下を続けてきましたが、2008年を底にわずかずつ上昇しています。

業界団体の一般社団法人日本建設業連合会(日建連)は一般的にも用いられる付加価値労働生産性で現場レベルの生産性を測定することは困難として、完成工事高(単位:円)を人・工(単位:人日)で割った物的労働生産性を測定しています。それを基に2006年度を100とした指数で見ると、2011年度から上昇が続き、特に2016年度以降は大幅な上昇となっています。

一方、業界の人手不足は深刻で、建設業界では高齢化も全産業を上回るペースで進んでいます。家入氏は「人間は超優秀な万能マシン。視覚、聴覚、臭覚など五感はセンサーとして働き、脳が1秒で処理する情報量は日本有数のスーパーコンピューター「京」が40分かかって処理する情報量に匹敵します。移動能力が優れたロボットであり、現場の空気を互いに読み合い、あうんの呼吸で協働できるチームワーカーでもあります」としたうえで、「建設業は人間の能力に頼りすぎてきた。人手不足を考えれば今後は難しい」と強調します。

労働生産性を上げるためにはどうしたらよいか?

土工やコンクリート工の生産性50%向上の可能性

建設業界の生産性や業務効率の向上はシステムベンダーが最新のシステムやサービスでご支援できますが、さらに建設現場では「課題になっている土工やコンクリート工の生産性をITの活用で50%向上できる可能性があります」(家入氏)。実際に山岳トンネルの工事では「トンネル1m当たりに要する作業員数が昭和30年代の新幹線工事で58人に対し、平成8年の長野新幹線工事で8人と生産性が大幅に上がり、最近の新幹線トンネル工事では6人にまで上がっています」(同)。現場では掘削機構を組み込んだブームが4本一体となったドリルジャンボを1人のオペレーターで操作できる実用機が開発されるまで技術革新が進んでいます。

「i-Construction(アイ・コンストラクション)」は2025年までに建設現場の生産性を20%向上させる目標を掲げています。中でも土工はドローン(無人小型航空機)による上空からの3次元映像撮影で測量が短時間になり、出来形の書類が不要となるなど検査項目が半減。3次元の設計データで設計図面との差分から、盛り土の量を自動算出でき、さらにICT建設機械を自動制御することで省力化、省人化が図れます。「ドローンの飛行経路はコンピューターで指示し、建機は1cm単位の精度で施工できます」(家入氏)

i-Constructionのワークフローでは、現場の構造物から3次元データを測定するBIM/CIM化を経て、設計と解析で最も作業効率の高いベストプラクティスを決定し、現場にフィードバックします。これはあらゆるものがインターネットにつながるIoTと同じです。ヒトやモノ、社会が相互に連携して営まれる現実世界の活動をデータとしてコンピューターの世界に映し出し、様々な種類のデータを組み合わせて分析・学習します。そして得られた知見を現実世界へフィードバックすることで現実世界の活動へ新たな価値を生み出しているのです。

BIM/CIMでは複雑に入り組んだ構造物の陰の部分など隠れたところまで忠実に3次元で表現します。 CIMのモデル内には使う部材の仕様など属性情報が格納されており、構造物の形、寸法と属性情報をまとめて扱うことで生産性が大幅に向上します。このモデルは構造計算、エネルギー解析から、仕上げ表や建具表の作成、見積・積算、工程・資材管理、構造物の維持管理まで幅広く活用できます。現在、CIMモデルを入力データとして解析するソフトは気流や津波、避難ルートの解析までできます。「構造物の中に設備がどのように入るのかも一目瞭然で解析でき、現場で失敗しないための方策を事前にいろいろ考えることができます」(家入氏)。複雑な鉄筋やケーブルが干渉している箇所を自動的に検出して設計段階で修正することも容易です。

建設現場では、たとえば道路工事で車線規制などがある場合、実際の様子を3次元画像で示して関係者の合意形成を促したり、高圧電線の近くでクレーン作業する場合のシミュレーションもクレーンの旋回範囲などを計算に入れて安全で効率的な作業手順を提案したりと様々な活用事例があります。

ARホロレンズで墨出し作業が大幅効率化

最近は施工図データを実寸大で床にじかに作図する「自動墨出しロボット」まで開発されています。
「AR(拡張現実)を現場に持ち込むホロレンズを使ってU字溝を基準となる仮設の丁張りなしで施工する例もあります。ホロレンズを着用した職人さんの目には実際の現場で丁張りが見えるわけで正確に効率よく作業できます」(家入氏)。ホロレンズは建設現場で役に立つ道具で、床下の配管や吊りボルトなどの位置が床上からリアルに見え、墨出し作業を大幅に効率化できます。

ICT建機で完全週休2日制、働き方改革を実現

3次元データを建設機械で使うと、平らな溝や法面も図面どおりに掘るため、掘過ぎの心配がありません。「福井市の道端組では女子事務員がICTショベルに挑戦し、経験が4、5年ある人と同じくらいの精度で早く法面を施工できました。経験者だとベテラン並みの能力を発揮できるでしょう」(家入氏)。群馬県渋川市の南雲建設は社員30で3台のICT建機を保有し、自社流のi-Constructionを推進。思いきった省力化で今年から完全週休2日制を導入するなど働き方改革を実現しています。大分市の大分川ダムでは作業員がタブレットで指示するだけで重機が動いています。

3Dプリンターで土の家やコンクリート橋、鋼橋までつくる

3Dプリンターは3Dモデルから立体の模型を自動作成する機械で、造形に使う材料は樹脂、粉末、液体など様々です。装飾が複雑な神社の楼門のモデルを精緻に製作する技術は見事ですが、最近は実際の建物を3Dプリンターでつくる実例もあります。窓の取り付けや壁の塗装、屋上の仕上げなどは手作業ですが、全部手作業に比べ「早くつくれるのは確実です」(家入氏)。

土やコンクリートで家を造り、オランダでは橋まで造りました。複雑な曲面を持つ鋼橋も建設事例があります。日本のゼネコンもコンクリート3Dプリンターを続々と開発しており、施工例が今後増えそうです。

清水建設はBIMとロボットが連携するビル建設現場で70%の省人化が可能としています。同社は溶接ロボットを開発、溶接済みの部位の品質を非接触で検査できるシステムも導入する予定です。このほかITで動く施工機械は鉄骨部材を設置位置に吊り込む機械や床、天井を仕上げる機械も開発されています。

大和ハウス工業は鉄骨の柱や梁に耐火被覆を吹きつけるロボット、大林組は角型鋼管柱の溶接ロボットをそれぞれ開発。産業技術総合研究所はボードを運んで取り付けネジ止めまでするヒト型ロボットを試作しています。竹中工務店とフジタは障害物を乗り越え、階段も後ろ向きになって降りることができる四足歩行型ロボットを開発、それぞれの現場で使い勝手を検証しました。

AIで構造物のひび割れやをひずみ、傾きを自動検出

富士フイルムは撮影した橋梁などの画像を自動合成し、幅0.1mm以上のひび割れを自動検出するAIシステム、日立プラントサービスは食品工場のレイアウトを50%効率化するAIシステムをそれぞれ開発しました。米Doxel社は現場を自走式の3Dスキャナーで点群化し、AIでBIMモデルと比べ工事の進捗や取り付け精度を自動管理するシステムを導入。ドローンとAIによるインフラ保全では、高所に取り付けたアンテナのひずみや傾きを3Dモデルと比較して検出するシステムが登場しました。ボルトや鉄骨などの状態も間近で目視点検するように確認できます。

家入氏は「これからはAIやロボットが建設労働者になります。人間に頼ってきた建設業はAIやロボットと一緒に働く業界に生まれ変わるでしょう」と予測します。頭脳労働はAI、肉体労働はロボットが担う時代がやってきます。しかし家入氏は「AIやロボットは融通の利かない社員です。人の仕事の7、8割をやってくれたらいいかな」とも言います。ロボットと人間1人で1.5人分の仕事をするなら、1人当たりの生産性は1.5倍に向上します。

これからはAIやロボットが“建設労働者”になる

最後に家入氏はAI、ロボットと働くための「7つの戦略」として、

  • ① 自分の仕事の流れを理解せよ
  • ② ICTの知識は広く浅く集めよ
  • ③ 創意工夫力を持て
  • ④ 顧客志向力を磨け
  • ⑤ 社外に仲間を作れ
  • ⑥ 論理的思考力(プログラミング力)を養え
  • ⑦ オタクの居場所を確保せよ

を掲げました。

「自分の仕事の流れ」を理解していないと、AIやロボットとの仕事の分担が明確でなくなり効果をうまく引き出せません。「創意工夫力」は前例にとらわれず、いかに楽をするかという目的のために発揮されるべきです。「顧客志向力」とは「あなたの仕事にお困り事はないですか?」と常に顧客目線でAIとロボットの活用を考えることを指します。「論理的思考力」はAI、ロボットに命令して仕事をさせるための「言葉」として身につけないといけません。「オタク」はAIやロボットの知見が豊富で使いこなすノウハウにたけた人で、こうした人は体育会的発想をする人が多い建設会社の中では少数派です。こうした人たちがいづらくならないように経営者は人事や組織で十分に配慮するべきです。

オービックのクラウドサービスが生産性、業務効率向上に力を発揮

労働生産性を上げるためにはどうしたらよいでしょうか? 工事の単価を上げ、労働時間を減らすのが最も効果的で、オービックは業務システムの改善を通じて、経営効果を生み出す活用や手法を提案します。労働時間の削減は情報システムに携わる人と現場でシステムを運用する人の2つの視点があり、情報システム担当者向けではOBICクラウドの活用で情報インフラの運用や維持管理の負荷を大幅に低減できます。

消費税増税や法改正などに伴う変更が生じる場合は、オービックがクラウド環境を使って対応モジュールを早期にお客様に提供。各現場の生産性向上や業務効率化に対して、より前向きな最新技術を活用します。監査でも責任を分ける「責任分界点」をなくし統制レベルを上げ負荷を低減する仕組みがオービックのクラウドサービスにはあります。オービックのクラウドサービスは国際的な第三者認証も得ている信頼できるサービスです。

現場でありがちな情報の二重管理をなくし、定型業務や入力の負荷も大幅に減らすことができます。生産性の向上にオービックが支援できることは多く、現場の方々と一緒に考えて提案することを考えています。

売上や利益など労働による付加価値を高めることもオービックが支援できます。社内各部門や現場の情報の見える化により、コストを低減したり、重点分野を見定めて経営資源を投入したりする仕組みをオービックは提供できます。オービックの建設業向けソリューションは業務効率と生産性の両面で向上策を提案できます。人材や資材を各工事に充て利益を生み出し、次の工事に資源を回していく――この一連のフローを改善し経営効果に直結する提案を積極的にしていきます。

様々なビジネスモデルに対応できるのもオービックの大きな特徴で、建設業ソリューション以外にも、たとえば自社ビルのテナント管理や賃貸管理のソリューションも提供できます。

オービックでは京橋エドグランで建設業界向けソリューションセミナーを順次開催しております。デモンストレーション等も準備しておりますので、是非ともご参加をご検討ください。

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