情報システムセミナーレポート[2019年 新春] 会計管理 2019(平成31)年度税制改正の重要ポイントを読み解く

2019年2月12日(火) 東京会場

A31
13:30-14:30
平成31年度(2019年度)税制改正セミナー
税制改正の重要ポイントを読み解く

安積 健 氏
辻・本郷税理士法人 審理室 部長 / 税理士

平成31年度(2019年度)の税制改正について、発表された「税制改正大綱」に基づき、最新の情報をいち早く伝え、企業経営の観点で対策、対応をわかりやすく解説しました。法人課税は研究開発から仮想通貨、貸倒引当金まで多岐にわたりますが、法人税の軽減税率や設備投資減税、事業継続力強化税制、みなし大企業の範囲など経営に直結する税制改正詳しく説明しました。

研究開発税制を見直し競争力を強化

研究開発税制は競争力の強化がポイントです。

2020年までに官民合わせて研究開発投資を対GDP比4%以上とする政策目標は民間企業だけの場合、3%以上です。改正は控除率のインセンティブ強化や一定の企業に対する控除上限の引き上げ、控除率と控除上限の上乗せ時限措置の延長からなる「総額型」と、総額型に控除率と控除上限の上乗せとして統合したうえで廃止する「高水準型」、支援対象の拡大や一部控除率、控除上限の引き上げからなる「特別試験研究費」の3本柱で実施されます。

総額型は、控除率のインセンティブ強化で、試験研究費の控除率の増減割合が5%基準から8%基準に変わります。これにより増減割合が8%以上の場合は改正前と変わりませんが、0〜8%の場合は控除率が引き上げ、8%未満の場合は控除率が引き下げとなります。これらの変更ついて、安積氏は「もっと頑張ってほしい会社へのインセンティブを強化した」と説明しました。

研究開発を行う一定のベンチャー企業の研究開発費の控除上限を改正前の25%から40%に引き上げます。「一定の」というのは、設立後10年以内の法人のうち当期に翌期に向けた繰越欠損金がある条件を指します。廃止する高水準型では2年間の時限措置として、試験研究費が平均売上金額の10%超の場合、控除率を上乗せします。控除上限の上乗せは2年間延長します。

特別試験研究費は一定の要件を満たす民間企業等への委託研究費を加え、控除率を20%とします。一部控除率の引き上げでは研究開発型ベンチャー企業との共同研究や委託研究の控除率を25%とし、控除上限は5%から10%に引き上げます。

中小法人向け法人税の特例適用期限の延長

中小法人向けには法人税の軽減税率の特例適用期限が平成33年3月末まで延長されます。中小法人とは資本金1億円以下の法人ですが、資本金5億円以上の法人の100%子会社であるなど大法人と完全支配関係がある場合は除きます。

中小企業向け設備投資減税を一部見直し、働き方改革も支援

中小企業は同じ資本金1億円以下の法人ですが、大規模法人(資本金1億円超)に発行済み株式の2分の1以上を保有されている法人、または複数の大規模法人に発行済み株式の3分の2以上を保有されている法人を除く条件が中小法人とは異なります。税制改正は中小企業向けの設備投資減税で、設備投資の経営改善で売上高または営業利益の伸び率が2%以上の見込みであることについて、認定経営革新等支援機関の確認を受けることを適用要件に加えたうえで、適用期限を平成33年3月末まで2年延長します。

中小企業向けの設備投資減税では、特定経営力向上設備等の範囲を明確化、適正化して、働き方改革に資する設備も適用対象であることを明確して、同様に適用期限を平成33年3月末まで2年延長します。

事業継続では災害への事前対策の設備投資減税を新設します。対象は青色申告書を提出する中小企業、中小企業等経営強化法の事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を受けた者で、設備は2つの計画いずれかに記載された機械装置、器具備品、建物附属設備のうち、機械装置のうち取得価額が100万円以上など一定の規模以上のものが対象となります。機械装置は自家発電機、排水ポンプ、制震・免震装置、器具備品は照明器具、衛星電話、データバックアップシステム、建物附属設備は貯水タンク、防火シャッター消火設備、排煙設備などが対象となります。これらは20%の特別償却が認められます。

中小企業向けの租税特別措置で「みなし大企業」の範囲見直し

大規模法人に大法人の100%出資法人と100%出資の複数の法人からなるグループ内の複数の大法人に発行済み株式の全部を保有されている法人を加えます。中小企業投資促進税制や商業・サービス業等活性化税制などのみなし大企業の判定において、大規模法人の有する株式から、投資事業有限責任組合にかかわる組合員の出資をした中小企業基盤整備機構の有する株式を除外します。

地方法人課税は新たな偏在是正措置が講じられます。資本金1億円以上で、所得金額が年400万円以下の普通法人は事業税・特別法人事業税の合計が平成31年10月1日以降に始まる事業年度で改正前の5.0%から4.8%に変わりますが、資本金1億円以上でも、1億円以下でも、基本的には納税者の負担は変わりません。地方交付税は不交付団体に交付されませんが、地方譲与税は不交付団体に譲与されます。改正は譲与基準を人口とすることで、「改正前の地方法人特別譲与税に比べ偏在を是正する効果が増します。報道によると、地方法人2税の人口一人当たりの都道府県格差は6倍から3倍程度に縮まる見込みです」(安積氏)。

株式交換後の合併と合併の対価見直し

一定の方法により親子100%関係にした後に完全子会社を合併法人とする適格合併が見込まれている場合にも、完全支配や支配関係、親子関係の継続要件について、適格合併の直前までの関係で判定します。合併や分割、株式交換に係る適格要件や被合併法人等の株主における旧株の譲渡損益の計上を繰り延べる要件のうち、対価に関する要件で対象となる合併法人等の株式に合併法人等の発行済み株式の全部を間接に保有する関係がある法人の株式を加えます。

役員給与は業績連動給与の損金算入手続きが緩和されます。報酬委員会を設置する法人の業務執行役員が報酬委員会の役員でないことの要件を除外し、業務執行役員が自己の業績連動給与の決定に参加していないことの要件を加えるとともに、報酬委員会の諮問を経た取締役会での決議では、独立した社外役員が委員の過半数であることなどを見直します。

仮想通貨の法人税取扱いが明確化

仮想通貨については企業会計基準委員会による実務対応計画が公表され、期末に保有する仮想通貨について、活発な市場があれば時価法で、そうでなければに切放し低価法で、それぞれ評価し帳簿価額との差額を当期の損益として処理するころになった。これを受け、今回の改正では活発な市場があれば時価法で、そうでなければ原価法を採用することにしている。低価法は保守的過ぎることから適用しないとのことです。

このほか仮想通貨の一単位当たり譲渡原価の算出方法は移動平均または総平均法とし、譲渡損益は譲渡契約を結んだ日に計上できるようにします。信用取引は期末に決済されていない場合、みなし決済損益額を計上できる。

貸倒引当金は公益法人、協同組合等の特例措置が廃止

公益法人、協同組合等の貸倒引当金特例は適用期限で廃止します。

国税関係帳簿書類の保全電子化を見直し企業の事務負担を軽減

政府全体として行政手続きの電子化の徹底に取り組んでいるが、スキャナ保存の承認件数はまだ約1800件にとどまる。企業にとって承認を受けるための事務負担が大きく、システム改修が必要になるうえ、過去の資料はスキャナ保存が認められないなど、時間とコスト、効率性の点でメリットがない。政府はこうした実態を踏まえ、利便性の向上に取り組もうとしており、今回の改正では公益社団法人の確認を受けたソフトウエアを利用する者の承認申請書の提出手続を簡素化したり、受託開発されるシステムを利用する者が要件の適合性を事前に国税当局に確認できたりできる体制を敷く。

さらにスキャナ保存の承認を受けている者は所轄税務所長への届出書の提出など一定の要件を満たした場合に、その承認以前に作成または受領した契約書や領収書等の重要書類についてスキャナ保存できるようにする。最後は土地売買による所有権移転登記に係る税率は現行の1.5%への軽減措置を平成33年3月末まで2年延長する。

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