情報システムセミナーレポート[2018年 夏] ERP システム導入、成功と失敗の分岐点

2018年6月5日(火) 東京会場

A31
13:30-14:30
ユーザーの不満 vs. ベンダーの言い分
システム導入、成功と失敗の分岐点

桔梗原 富夫 氏
日経BP社 日経BP総研 フェロー

システム導入・刷新プロジェクトのうち、47.2%が失敗――こんな結果が日経コンピュータの調査で明らかになりました。ユーザー企業とITベンダーの間で発生するシステム関連トラブルは後を絶たず、最悪の場合、予算と時間を投入したシステムは「動かないコンピュータ」と化してしまいます。システム導入を成功させ、ビジネスに貢献する鍵は何か、過去の事例を交えて解説しました。

ITプロジェクトの成功率は?

「スケジュール、コスト、満足度。この3条件をクリアしたITプロジェクトは、わずか52.8%に過ぎません。約半分が失敗しているのです」と、桔梗原氏はショッキングなデータを紹介します。プロジェクトが遅延する原因は「システムの仕様変更が相次いだ」(37.4%)、「各フェーズ(工程)の見積もりが甘かった」(28.7%)、「システムの不具合等想定外の問題が発生した」(27.7%)などが上位を占めています。こうしたスケジュール遅延の原因の多くは、上流工程にあると桔梗原氏は指摘します。

コスト超過の原因としては「追加の開発作業が発生した」(64.4%)、「追加の設計作業が発生した」(53.7%)、「見積もりが甘かった」(37。3%)が上位を占めています。コストが超過すると、ユーザー側の予算増額やベンダー側の値引きなどの対策を迫られることになります。

実際に、日経コンピュータに掲載した失敗事例を分析したところ、トップとなったのは「ユーザー企業が要件をまとめられず」でした。次に多いのは「ベンダーが要件を理解できず」です。いずれも上流工程に起因しています。

要件定義の不備による失敗は増加傾向

「動かないコンピュータ」裁判を読み解く

「スケジュールが延びた」「コストが超過した」などが当事者で解決できるレベルを超え、近年では裁判沙汰も珍しくなくなっています。「これは2008年から繰り広げられた地方銀行と大手ITベンダーとの訴訟が引き金になっています」と桔梗原氏は語り、代表的な事例を紹介しました。

その1つが、あるユーザー(国立大)とベンダー(N社)の争い。ユーザーが病院情報管理システムの入札を実施し、N社を選定しましたが、際限なく追加・変更が繰り返されました。ベンダーは期日までシステムを引き渡すことができず、2010年4月にユーザーは債務不履行に基づく契約の解除を通告。同年に8月にはベンダーが約22億8000万円の損害賠償を求めてユーザーを提訴、同時にユーザーも約19億4000万円を求めて反訴しています。

2016年3月、旭川地裁が過失割合をベンダーが8割、ユーザーが2割として双方に賠償金の支払いを命じましたが、ともに提訴。札幌高裁はユーザーの債務不履行だけを認め、賠償金の支払いを命じています。理由は「ユーザーに協力義務違反が認められる一方、ベンダーにプロジェクトマネジメント義務違反はなかった」というものでした。

トラブルの原因と対策を考える

桔梗原氏はシステム開発が失敗する5大要因を指摘し、今回は「パッケージ活用の認識不足」にフォーカスして、講演を進めていきます。

「パッケージ活用失敗のパターンに『現状のままに合わせたい』というユーザーからの希望がありますが、これは要注意です」と訴えます。例えば現場では「現状のまま」を要望し、要件定義にも参加せず、情報システム部門とITベンダーにまかせ切りにするケースが散見します。しかし、このようなケースでは、テスト段階において使い勝手の違いに現場は不満を爆発させることが多く、こうなると追加開発が重なり、結局スクラッチと同程度まで費用が膨らんでしまうのです。中にはパッケージの導入を断念するケースもあります。「『基本的にOK』『原則問題ない』は、要件の肥大化につながる危険信号です」と桔梗原氏は警告します。

さらに桔梗原氏はパッケージを導入する際のパターンを3つ挙げ「パッケージを利用するならノンカスタマイズが原則。たとえ修正するにしてもパッケージの根幹に影響しない機能の外付けにとどめるべきです。パッケージそのものの修正は、ユーザーが単独では保守できなくなるばかりではなく、将来のバージョンアップも困難になります」と解説します。

パッケージを導入する際のパターン 出展:日経コンピュータ

ユーザーとベンダーの関係

ユーザーはベンダーに対し、「ともにビジネスを考えてくれるベンダーを選びたい」「真のソリューションを提案してほしい」と考えており、「言われたことをこなすだけ。提案もない」「納品直前になって間に合わないといってくる」といった不満を持っています。

一方ベンダーには「要件の肥大化が増えている」「SIベンダーとユーザー企業のコミュニケーションの難易度が上がっている」「人材不足の上に特定のエンジニアに負荷が集中しがち」などの言い分があります。

「動かない」状態に陥る要因は、ユーザーとベンダー双方に責任があるのです。桔梗原氏は「動かないコンピュータ」撲滅のための10カ条を紹介し「『動かないコンピュータ』撲滅の基本は今も昔も変わりません。ベンダーはプロジェクトマネジメントの義務を果たし、ユーザーは協力する。双方が対策のパートナーであり、車でいえばその両輪であるということを理解してください」と呼びかけました。

今後のセミナー開催案内をご希望の際は下記よりお問い合わせください。(案内状が出来次第、ご連絡させていただきます。)
  • お電話でのお問い合わせはこちら

    フリーダイヤル0120-023-019(受付時間:平日9:00〜17:30)

    Webフォームでのお問い合わせ

    情報システムセミナーなどのご質問・ご相談はお気軽にお問い合わせください。
    メールにて情報を案内させていただきます。

    メールにて案内を受け取る