情報システムセミナーレポート[2018年 新春] 経営管理 『経営管理を会計の視点で考える』シリーズ 第3弾
大手銀行の人員削減と製造業の品質不正
— 無関係に見える2つに共通するコストと働き方の問題 —

2018年2月6日(火) 東京会場

A11
9:30-10:50
『経営管理を会計の視点で考える』シリーズ 第3弾
大手銀行の人員削減と製造業の品質不正
— 無関係に見える2つに共通するコストと働き方の問題 —

金子 智朗 氏
ブライトワイズコンサルティング合同会社 代表社員 / 公認会計士 / 税理士

コスト削減を目的に、数千人規模の人員削減を計画している大手銀行。過剰なコスト削減要求を背景に、品質・検査の不正が相次いでいる製造業。無関係に見える2つの現象に共通する「コスト」という問題点について、金子氏は、独自の切り口で解決策を示します。

大手銀行の人員削減

メガバンクが、相次いで大規模な人員削減を発表しています。ある銀行では、2026年度末までにグループの従業員数を、現在の約7万9,000人から6万人に減らす方針を公表。別の銀行では、現在の4万人の従業員数を2023年度までに6,000人程度減らすとの見通しを発表しています。また、2020年度までに4,000人分の業務量を削減し、より付加価値の高い事業に人材を振り向ける、と投資家向けに説明している銀行もあります。
これらの銀行が共通して口にしているのが、「RPAの活用」ですが、「RPAは業務の自動化は実現しますが、それは改善ではありません。まずい仕事の進め方を加速してしまう危険性もありますので、注意が必要です」と、金子氏は警鐘を鳴らします。

大手製造業の不正

一方で、大手製造業では、品質データ改ざんが、次々と明らかになっています。鉄鋼メーカーでは性能データの改ざんが発覚、素材メーカーでは子会社でのデータ改ざんを発表、繊維メーカーは検査データの改ざんを公表しました。自動車メーカー2社では、無資格検査が相次いで発覚しました。
こうした不正は、極めて高い代償が伴います。自動車メーカーは、リコール費用が260億円といわれ、もう1社は220億円と発表しています。 さらに、ここから金子氏は「品質原価計算」の考え方へと言及していきます。
品質原価は、品質規格を満たす製品にするために事前にかける「品質適合コスト」と、品質規格を満たさないことにより事後的に発生する「品質不適合コスト」で構成されます。米国はこの2つのコストのバランス最適化を考えるのに対し、日本は品質不適合コストを限りなく0に近づけようと考える傾向があります。「米国は品質をコストからドライに割り切り、日本は果てしなく品質を追い求めます。そこに日本の製造業の強味がありましたが、IoTによって事後的に機能等をアップデートできるようになると時間をかけて品質を追求するより、Time to marketが重視されるようになりつつあります」と金子氏は指摘します。

コストをどう管理するか

銀行はコスト削減を求めて人員削減し、製造業はコスト削減に追われて品質管理まで手が回りません。コストをどこにかけるのかという共通の課題を抱えています。では、企業はコストをどう考えればいいのでしょうか」と金子氏は会場に問いかけます。
コストはキャッシュの流出であり、嫌われる存在ですが、コストこそが売上の源泉です。コストには売上に貢献する「善玉コスト」と、売上に貢献しない「悪玉コスト」の2種類があります。その区別をすることなく、一律コスト削減することほど愚かなことはありません。
また、コストは富の分配であり、原価は仕入業者に分配され、給与は従業員に分配され、税金は国や地方自治体に分配されます。そして、最後に残った純利益が株主に分配されます。
「安易な人員削減や給与カットはモチベーションを下げます。儲けるための知識を持ち、知恵を出すのは従業員です。株主ではありません。働いている従業員が最も重要なステークホルダーなのです」と、金子氏は訴え「人件費前利益」という独自の考え方を示しました。

“チャージャブル・タイム”という意識を持つ

コストは変動費と固定費に分かれ、固定費はさらにマネージド・コスト(managed cost)とコミッティド・コスト(committed cost)に分類されます。マネージド・コストは広告宣伝費、研究開発費、接待交際費など責任者の裁量で管理できますが、コミッティド・コストは減価償却費、賃料、人件費などその発生を回避し得ない固定費です。
コミテッドコストは減らすことが困難で時間もかかり、その例としてリーマンショックからの回復に後れをとる自動車メーカーがあります。また、大幅な低コスト化に成功している米国の航空会社を取り上げ、「管理すべきは稼働率です。いかに稼働率を上げるか。まずは稼働率を上げる策を考え、それができないときに初めて経営資源の削減を考えるべきです」と解説します。ただし、稼働率を上げていいのは稼働率の上昇によって売上が増える営業部門や製造部門だけです。間接部門は稼働率を上げるのではなく、ムダな業務を削減し生産性を上げるのが目指す方向性です。
ここで金子氏は、とある企業の営業部門で行った活動分析の経験を紹介します。営業部員全員の活動内容を表にしたところ、お客様に対価を請求できる付加的活動が、極めて少ないことが判明しました。会議が多く、お客様のために費やしている時間が少ないのです。

「今行っている作業は『顧客に対価を請求し得る活動や時間(chargeable time)か』という意識を持ってください」と金子氏は会場に呼びかけました。そして、「RPAによって余った時間や人員を、これからどこに振り向けるのか。その分析と判断が極めて重要となります」と金子氏は強調し、終演しました。

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