情報システムセミナーレポート[2018年 秋] 人事管理同一労働同一賃金はどうなる?最高裁判例の影響と対応

2018年10月23日(火) 東京会場

A31
13:00-14:10
「同一労働同一賃金に関する2つの最高裁判例」企業に今後与える影響と対応
− 同一労働同一賃金に関連する類似裁判例のポイントもあわせて解説 −

佐藤 修氏 氏
佐藤社会保険労務士法人 代表 / 社会保険労務士

2018年6月、今後の人事賃金制度を左右する「N事件」と「H事件」の最高裁判決が出ました。この判決は、同一労働同一賃金のガイドラインに大きな影響を与えると予想されます。本講演では、ほかにも関連する判例を紹介し、従業員とのトラブルを未然に防ぐための対策を解説しました。

同一労働同一賃金とは

労働基準法の改正が進められ、時間外労働の上限規制や年休5日取得義務化などが、2019年4月1日から施行されます(中小企業は一部2020年4月1日から)。同一労働同一賃金も2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日から)から施行となります。「同一労働同一賃金法」という名前の法律は存在せず、「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」の3つを1つにまとめて「パート・有期契約労働法」を制定します。正式には「短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」です。

では、誰と誰を比べて同一労働同一賃金なのでしょうか。対象となるのは「限定正社員(地域・時間・職を限定)」が存在している場合は「非正規雇用労働者(パート、アルバイト、契約社員)」です。

また、何を比較しているのでしょうか。
「裁判の論点は『個別の手当の比較』です。限定正社員と非正規雇用労働者の通勤手当、福利厚生などは同一とするべきですが、そこに差異がある場合は説明できる合理性がなければなりません。差を設けることが問題なのではなく『差について説明できるか?』が最も重要です」(佐藤氏)。

例えば、人事考課(評価制度の違い)やペナルティーの有無など責任の範囲、人材活用の仕組み、配置転換の範囲(配転、職種変更、出向、幹部登用)などの違いを説明できなければなりません。

各改正法案の施行期日

各改正法案の施行期日

判例

佐藤氏の講演は、判例の解説に入ります。

N社事件
郵便物の仕分け・配達・郵便商品の販売などを行っているN社の非正規雇用者から、同じ業務であれば正社員と同じ手当を支給するよう、 東京地裁および大阪地裁に訴えがありました。

N社では、正社員の業務を平成26年4月以降次のように制度化していました。

  • 総合職=企画立案・折衝調整・営業・管理業務など幅広い業務を行う。
  • 地域基幹職=業務内容は総合職に類似。転勤は会社指定の範囲内限定。
  • 新一般職=業務内容は郵便局の窓口業務・郵便内務・郵便外務。転勤なし。

地裁が非正規雇用者との比較対象としたのが「新一般職」でした。

注目されたのが、大阪地裁から下された判決です。住居手当は転勤なしの「新一般職」と「非正規雇用者」は、同一でなければならない、という判決でした。N社は日本有数の大企業で、非正規雇用者の数は約20万人に及びます。この約20万人に住居手当を新一般職並みに支払うと、年額数百億円にも及びます。

ここにおいてN社の決断が「新一般職への住居手当を10年かけて廃止する」ということでした。
「非正規雇用者の待遇を改善するのではなく、正社員の手当をなくしたのです。これは大きなインパクトを与えました」と佐藤氏は語ります。

H社事件
配送ドライバーがH社を訴えた裁判。ドライバーは「いずれ正規社員へ登用する」という口約束を信じて7年勤務しましたが、この間にあったのは時給10円のアップ(1150円から1160円へ)だけでした。

2018年6月1日に下された最高裁の判決では、住宅手当以外は不合理だとして、ドライバーの勝訴となりました。皆勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当を非正規雇用者に支払うよう決まったのです。一審、二審、三審と重ねるにつれて、非正規雇用者に有利な判決となったことで、世間の注目を集めました。

N運輸事件
コンクリートミキサー車の運転をしている会社の、定年後再雇用者からの訴訟です。論点となったのは、定年を迎えた社員が再雇用された後の賃金の減額幅でした。

第一審の東京地裁で、定年後再雇用者全面勝訴の判決が出たことで話題となりました。定年前と比較して、ほぼ2割減の基本給を不合理と認めたのです。その後、第二審の東京高裁と第三審の最高裁で会社側の逆転勝訴となりました。労働契約法20条及び同一労働同一賃金における均衡を考慮するさいに定年というその他の事情が大きく認められた形となりました。社会一般通念上、大企業での定年後再雇用者の基本給は6〜7割、中小では7〜8割が現状で、これが認められた形となりました。

同一労働同一賃金に向けてやるべきこと

また、同一労働同一賃金では賃金だけが比較されるのではなく、すべての待遇が対象になる可能性があります。そのため、同一労働同一賃金の施行前にやるべきこととして、佐藤氏は正社員と非正規社員の「手当・福利厚生などの待遇差一覧表」の作成および不合理性の有無の確認を推奨しました。また、正社員、非正規社員それぞれ別個の就業規則を定め、非正規社員にも簡易な評価制度などを導入し、差別化できるようにしておくことも、強調しました。

最後に、佐藤氏は次のように会場に呼びかけました。
「同一労働同一賃金への対応として、その対策は賃金の見直しだけではありません。賃金以外で従業員の満足度を得る手段はいくつもあります。通勤手当は見直してください。社員食堂や人間ドック助成など福利厚生も少しは提供しましょう。慶弔休暇・病気休職など休暇制度は充実させてください。休日・休憩・休暇もどんどん与えるべきです。これでいい人材を囲い込みできるなら安いものです」(佐藤氏)。

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