情報システムセミナーレポート[2017年 夏] 会計管理 経理部門に求められる戦略的役割とは?
「ビジネスモデル思考」で自社のあるべき管理会計手法を考える

2017年6月7日(水) 東京会場

B11
9:30-11:00
経理部門に求められる戦略的役割とは?
「ビジネスモデル思考」で自社のあるべき管理会計手法を考える

夏目 岳彦 氏
ミネルヴァインサイト合同会社 代表社員 / 公認会計士

管理会計とは、単なる事業セグメント別の集計や分析ではありません。次の経営の打ち手を示唆する分析や業績の先行予測など、経営者が欲しい情報を提供できる手段であるべきです。この講演では、多くの企業の経営コンサルティング業務に従事する夏目氏が、ビジネスモデル別の重要業績評価指標(KPI)によるインセンティブ設計までを含めた、戦略的な管理会計制度のあり方を紹介しました。

経営者が欲しい計数情報とは?

財務会計が企業をとりまく利害関係者に過去の財政状態や経営成績を制度に基づき報告するのに対し、管理会計は経営管理者に対して、その意思決定や業績評価を必要な計数情報を報告するものです。「出来合いのバックミラー(財務会計に基づく過去情報の報告)だけでは運転(経営)できない、すなわち、過去だけではなく、未来を見通すその企業独自の情報を提供するのが、管理会計の役割です」と、夏目氏は説明します。

では、経営者が本当に欲しいと思っているのは、どのような計数情報なのでしょうか。
第一に、それは、「次の経営の打ち手を示唆する要因分析」となっている必要があります。具体的には、各企業において、ビジネスモデル別、さらには利益を生み出す最小のビジネスユニット別に分析された業況に関する情報がベースになるのではないでしょうか。「今の会社の稼ぎ頭はどの事業ユニットで、課題を抱えているのはどの事業ユニットなのか」ということを経営者はリアルタイムに把握したいはずですし、これは、各事業の業績評価を行う上でも欠かせないものとなります。
第二に、それは、「業績の先行きをいち早く予測する先行管理情報」となっている必要があります。今期の着地がどうなるのか、来期の業績がどうなるのか、これは上場会社のみならず、非上場会社の経営者にとってもできる限り早く正確に知りたいのではないでしょうか。例えば、業績の悪化が決算の1か月前にわかるのと、半年前にわかるのでは、取り得る経営の打ち手の数がまるで変わってきます。

この第一、第二の役割を果たす計数情報を管理部門が経営者に提示するには、経営管理制度も ビジネスモデルまで踏み込んで設計する必要があります。ここでいうビジネスモデルとは、業種別ということではなく、例えば、売上・利益の持続性という点に着目して、「ストックビジネスモデル(同一の顧客から安定して継続的な売上が計上できる事業)」、「フロービジネスモデル(「同一の顧客からの売上計上はないか、あっても極めて不定期であり、常に新規顧客開拓が求められる事業」)」に分けて捉えてみるのはいかがでしょうか。

D社のケース事例を用いた要因分析‐現状の経営課題を読み解く

夏目氏は具体的事例としてD社(サービス業)の事業別損益推移表を示しながら、「あなたが経営管理者であるならば、この数字から読み取れる情報は何か、考えてみて下さい」と、会場に問いかけます。会場は、ワークショップのような雰囲気に包まれました。
D社の事業は以下の3つで構成されています。
●OS:アウトソーシング事業
個人事業主や中小企業を対象とした記帳、給与計算代行 (継続契約によるストックビジネス)
●MS:経営支援
会員制により運営、補助金取得支援、研修セミナー開催、人事制度、諸規程整備等を支援 (ストックビジネス(会員制課金)とフロービジネス(個別コンサル収入)の組み合わせ)
●FC:税理士事務所向けフランチャイズ事業
集客、提携サービスの紹介、情報提供など(フロービジネス(FC加盟獲得)とストックビジネス(FCロイヤルティ)の組み合わせ)

D社社長の悩みは、5年前から開始したFC事業が業績をけん引して会社を急成長させたものの、そのFC事業の業績が減速し、大幅な減益決算になっていることでした。

夏目氏は、「計数データをビジネスモデル別にドリルダウンして示し、その都度会場の聴衆に考えてもらう」という手法を用いながら、各事業の課題を以下の通りあぶりだしていきます。

事業別損益推移表— 「社長の言う通り、OS,MSは安定収益を稼いでいるが、FCの損益のブレが全社業績に大きな営業を及ぼしていること」
OS事業の損益推移表— 「安定推移しているものの、契約単価の高い法人顧客の割合が減少していることが懸念点であること」
MS事業の損益推移表— 「会員制事業は堅調に推移し、コンサル等のスポット損益が需給により大きく変動すること」
FC事業の損益推移表— 「加盟開発契約を優先しすぎて、出店支援や店舗指導といった加盟後のサポート機能がおろそかになっている可能性があること」

業績評価と先行管理 →インセンティブ付与のためのKPI設計

「計数を扱う部署の皆さんは、単に数字を集計して実態を読み取るだけではいけません。経営数値を扱うプロとしてのインサイト(洞察)が必要です。ぜひ、事業別の損益改善に資する新たな管理会計制度を提案しましょう。ここに皆さんの価値があります」と夏目氏は訴えます。

D社事例では、OS事業とMS事業は安定収益源ですが、両事業の相乗効果を発揮させる仕組みの設計を提案します。「クロスセールスを組織的に行う仕掛けを提案しましょう。OS事業からMS事業にお客様を紹介して成約したら、通常はMS事業の売上になります。これを両事業でいったんはダブルカウントしてOS事業においても売上を計上できるようにします。財務会計では違和感のある話ですが、管理会計は自由に設計できます」と夏目氏は解説します。
続けて、FC事業においては加盟契約締結だけではなく、出店後サポートまで評価対象として、業績評価をすることを提案しました。
「人間はかけ声だけでは動きません。具体的なインセンティブを与えましょう。評価の定規をどう設計するかで、組織や人の動き方は変わります」(夏目氏)。

例えば、FC事業のケースでは、加盟開発だけを評価基準にしますと、どうしても契約獲得をしやすい事業者を選びがちです。ところが加盟店として安定してロイヤルティ収入をあげることまで評価基準に組み入れると、候補者や立地選定もより慎重になりますし、加盟後の教育や指導が重視されるようになります。その意味では、利益の持続的成長に資する管理会計制度を考える場合、いわゆる財務上のゴール値(KPI)を定めた後に、それをいかに非財務(顧客満足度向上、社内プロセス改善、人材活性化)のKPIと連携させるかが重要であるといえるでしょう。

「今日は、BtoBサービス業の事例を使いながら、「次の打ち手を示唆する経営分析」と「業績の先行管理」について考えてみました。こうした分析には、ビジネスモデルごとに違う切り口を考える必要がありますし、営業や生産現場情報、更には人事評価との連携が欠かせません。オービックには、多種多様な業種の企業様において、こうした相談に乗ってきた実績があります。一度相談してみる価値があるのではないでしょうか。」と語り、講演をしめくくりました。

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