情報システムセミナーレポート[2017年 秋] 人事管理 「今、確実に」押さえておきたい重要労働判例とその対応
定年後再雇用者の賃金見直しや、同一労働同一賃金に関連する最新裁判例のポイントを解説

2017年10月25日(水) 東京会場

B51
15:30-16:30
「今、確実に」押さえておきたい重要労働判例とその対応
定年後再雇用者の賃金見直しや、同一労働同一賃金に関連する最新裁判例のポイントを解説

佐藤 修 氏
佐藤社会保険労務士法人 代表 / 社会保険労務士

平成28年には、今後の人事賃金制度を左右する重要な判決が相次いで下りました。これらの判例を通して、企業が従業員とのトラブルを未然に防ぐため、取り組むべき対策を解説します。このセミナーへの関心は非常に高く、2日間連続開催、および臨時の追加開催、さらに特設した同時中継会場も満席となりました。

A社事件 −正社員と定年後再雇用者との待遇格差

セメントの輸送会社A社のドライバー3人が、会社を訴えた事件です。ミキサー車のドライバーだった3人は、定年後に嘱託社員として再雇用されましたが、その業務内容はまったく定年前と変わりません。しかし、正社員と比較して、労働条件に不合理な差別があったとして、労働契約法20条違反であると賃金の差額を求めた事件です。

「ここで重要となるのが、『労働契約法20条』です」と、佐藤氏はこの法律の解説に入ります。労働契約法20条では、有期労働契約者の労働条件が正社員と異なる場合、その内容に不合理があってはならないという法律です。「均等待遇」(同じ働きをしている場合、賃金等の労働条件などの待遇面を差別しない)、「均等待遇」(働き方が異なる場合はバランスが必要)が求められます。

ここで、佐藤氏は、A社の正社員と定年後再雇用者との対比表を示しました。「これによると、差は2〜3割程度であり、常識的な範囲といえます。他社の例では3〜4割の差がある場合もあります」(佐藤氏)。

この訴えに対し、平成28年5月、一審の判決が東京地裁で下されました。@職務の内容、A配置変更の差が同じ(A社に配置変更はない)、B特段の事情、これら3点から判断し、@Aが同じで、賃金が下がることは一般的ではない。さらに、Bにおいては特段の事情もない。よって、不合理性が認定され、従業員側が勝訴となったのです。「これは大きなニュースとして取り上げられましたので、記憶している方も多いかと思います」(佐藤氏)。

しかし、平成28年11月の東京高裁の二審では、地裁の判決が覆り、労働条件の相違は労働契約法20条違反にはあたらないと判断されました。現在、最高裁に上告されています。

B社事件 −正社員と契約社員との待遇格差

B社は一般貨物自動車運送事業者で、有期契約労働者Y氏は諸手当の支給に関して正社員と比較して不合理な面があるとB社を訴えました。争点は「労働契約法20条に反しているか」、「有期契約労働者に正社員と同様の就業規則が認められるか」にありました。

佐藤氏は、B社の労働条件と賃金の比較を提示しましたが、大きな差があります。契約社員は
「無事故手当」はなし、「作業手当」なし、「給食手当」なし、「住宅手当」も「皆勤手当」も「家族手当」もありません。かろうじて「通勤手当」は上限5kmで3,000円が支払われます。ただ、正社員であれば同じ5kmで5,000円となっています。

訴えに対し、一審では「通勤手当の差額のみ不合理性が認められ」、Y氏への支払いが命ぜられました。しかし、これを不服としたY氏とB社はともに上告。二審では通勤手当のほか、無事故手当、作業手当、給食手当の不合理性が肯定され、Y氏に支払わなければならなくなるなど、「手当」の範囲が拡大しました。

企業が取るべき今後の対応

2つの判例を通して、佐藤氏は企業が取るべき今後の対応について言及します。
まず、正社員と定年後再雇用者に労働条件の差を設ける場合は、作業内容を定年前と異なる内容にしておくことが基本。具体的には、「異動は絶対にないことを契約書に明記」「役職から外す」「時短や週1〜4日勤務など正社員とは異なる勤務体系にする」「時間外労働や休日労働をさせない」などが必要となります。

次に、正社員と契約社員との労働条件に差を設ける場合は、不合理と評価される内容は避けなければなりません。例えば交通費で差額を設けることは、もはや許されません。昼食代や更衣室の利用など、福利厚生での差も認められません。訴訟になったら、確実に敗訴となります。「正社員の就業規則とは別に契約社員の就業規則を定めることです」と、佐藤氏は推奨します。

工場のパート社員全員を正社員にすると発表して、話題になった企業もあります。しかし、このようなことができるのは一部大企業に限られます。では、一般の中小企業はどうすればいいのでしょうか。

「『無期転換制度』を社員に勧めている企業もあります」(佐藤氏)。有期契約労働者を期間の定めのない無期労働契約に転換する制度の積極的な導入です。労働契約法20条の対象となるのは、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど期間の定められた労働者です。「しかし、無期転換社員であれば、期間の制約はなくなり20条の対象から外れますし、労働条件は従前と変える必要もありません」と、佐藤氏は最後に紹介しました。

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